2026年を迎え、日本のM&A市場は量・質ともに新たなフェーズに入りました。
ディールが成立した“その先”で、PMI(統合プロセス)の成否が企業価値を大きく左右する時代です。
PMIのご相談を受ける中で、私たちが繰り返し耳にする言葉があります。
「戦略や計画はあるのに、なぜか前に進まない」
その原因の多くは、制度やスキームではなく、人と組織のズレにあります。
PMIが停滞する会社には、統合初期に共通して起きやすい3つのズレがあります。
目的のズレ
「何のためのM&Aか」が現場に届いていない
経営層ではM&Aの目的が明確でも、
現場では「結局、何を目指しているのか」が腹落ちしていないケースは少なくありません。
買収側は成長やシナジーを意識し、
被買収側は雇用や文化の維持を無意識に重視している。
この状態では、同じ会議に出席していても、見ているゴールが異なります。
PMIが前に進む会社は、
「この統合で、何を変え、何を守るのか」
を、言葉を尽くして早い段階で共有しています。
権限のズレ
決める人が見えず、現場が様子見になる
PMIの初期でよく起きるのが、
「誰が最終判断をするのか分からない」状態です。
PMI担当者が兼務で、権限も曖昧なまま進むと、
現場は自然と様子見になります。
結果として、決断が先送りされ、小さな迷いが積み重なっていきます。
統合が進む会社は、
・誰がPMIをリードするのか
・どこまでの権限を持つのか
を明確にし、経営として公式に示しています。
感情のズレ
遠慮が本音を奪い、対話が止まる
PMIでは、論理より先に感情が動きます。
被買収側は評価される立場として慎重になり、
買収側も強く言い切ることをためらう。
その結果、会議は穏やかでも、本音は語られず、
重要な論点ほど後回しになります。
前に進む会社は、
「意見を言っても不利益にならない」
という安心感を、意図的に作っています。
対話の場を設計し、
率直な意見が歓迎される空気をつくることが、
PMI初期では何より重要です。
PMIは制度より先に、人の整流が必要
PMIというと、制度統合やシステム統合が注目されがちですが、
実際には人と組織の流れを整えることが先にあります。
目的・権限・感情。
この3つのズレを初期に放置しないことが、
その後のPMI全体のスピードと質を大きく左右します。
私たち一般社団法人日本PMIサポート協会は、
M&A後の統合現場に入り、計画だけでなく、
実際に「前に進む状態」をつくる支援を行っています。
PMIが始まったものの、
どこか手応えを感じられていない場合は、
一度立ち止まり、初期のズレを点検することが有効かもしれません。

