PMIで守るべき価値と、変えるべきもの

M&A後のPMIでは、組織体制、人事制度、業務プロセス、システムなど、多くの統合テーマを短期間で判断していく必要があります。

その中で難しいのが、買収先が持つもののうち、何を残し、何を変えるのかという判断です。

すべてを買収側のやり方に揃えれば、統合は早く見えるかもしれません。一方で、買収先が長年培ってきた技術、顧客との関係、現場の判断力、ブランド、組織文化まで失ってしまえば、M&Aによって獲得した価値そのものを損なう可能性があります。

PMIに必要なのは、単なる現状維持でも、一律の標準化でもありません。両社が持つ価値を見極め、統合後の成長につながる形へ再設計することです。

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財務諸表だけでは見えない価値がある

企業の価値は、売上や利益、設備、契約、保有技術だけで構成されているわけではありません。

顧客から相談される理由、品質を守る現場の判断、取引先との信頼関係、部門を越えて自然に行われている連携など、資料には表れにくい要素が事業を支えていることがあります。

こうした価値は、当事者にとって日常の一部になっているため、自社の強みとして認識されていないケースも少なくありません。

PMIでは、既存資料を確認するだけでなく、経営者や社員との対話、実際の業務、顧客との関係性を丁寧に見る必要があります。何がその企業の競争力を支えてきたのかを理解しないまま統合を進めれば、残すべきものまで整理の対象になってしまうからです。

「変えないこと」が正解とは限らない

買収先の価値を大切にすることと、すべてを従来どおり残すことは同じではありません。

長年続いてきた業務であっても、特定の人に依存しすぎている、意思決定に時間がかかる、組織間の連携を妨げているといった課題があれば、統合を機に見直す必要があります。

重要なのは、表面的な形を守ることではなく、その背景にある価値を守ることです。

例えば、顧客に寄り添う姿勢が強みであれば、従来の営業方法をそのまま残すのではなく、その判断基準や対応の考え方を整理し、新しい組織でも再現できる形に変えていくことが重要です。

これが、価値を失わずに変革を進めるPMIです。

両社の強みを組み合わせ、新たな価値を生み出す

PMIの目的は、二つの会社を同じ形に揃えることではありません。

買収先の技術と買収側の販売網を組み合わせる。買収側の管理基盤と買収先の現場力をつなぐ。片方が持つ顧客基盤に、もう一方の商品やサービスを届ける。

それぞれが持つ強みを理解し、組み合わせることで、統合前には実現できなかった価値が生まれます。

そのためには、統合計画を一方的に当てはめるのではなく、両社の個別性に向き合い、現場で実行できる形に落とし込むことが欠かせません。

PMIは、企業価値を再設計するプロセス

PMIでは、何を統一するかだけでなく、何を受け継ぎ、何を変え、どのような組織をつくるのかが問われます。

買収先の価値を残すことと、統合後の変革を進めることは、対立するものではありません。本当に大切な価値を見極められれば、残すべきものと変えるべきものが明確になります。

一般社団法人日本PMIサポート協会では、戦略、組織、人材、文化、業務、システムを個別に扱うのではなく、相互に関係する統合テーマとして捉えています。

企業がM&A後も自ら変わり続けられる土台をつくることが、PMIの重要な役割だと考えているためです。

買収によって得た価値を失わず、統合によってさらに強くする。そのためには、早い段階から「何を残し、何を変えるのか」を丁寧に議論することが重要です。

PMIの進め方や、統合後に残すべき価値の見極めにお悩みの場合は、ぜひ一度ご相談ください。

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